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グラン・トリノ

もう一本。
こちらもかなり期待度の高かった作品『グラン・トリノ』。
主演・監督をつとめたイーストウッド。
この作品を最後に俳優業を引退するそう。


イーストウッドが演じるのは映画史上最も頑固で偏見に満ちた老人 ウォルト。
絵に描いたような白人至上主義者。如何にも中西部の白人である。
偏狭を体現したようなキャラクターで、ことあるごとに多人種へ唾をはき、暴言を浴びせる。
舞台となるのはギャングが幅をきかせ、暴力が横行する決して治安の良いとはいえないエリア。人種のるつぼと呼ばれるアメリカに根ざした差別問題からくる暴力を赤裸々に描写しているのである。
今回、この作品が珍しかったのが主演・監督が白人であるのにも関わらず、白人がとても嫌な奴として描かれていたことである。相変わらず黒人、チカーノのダメなとこも忘れてませんが。

と、こんな説明をするとこのウォルト。どれだけ嫌な奴だろう?と感じるだろうが、さすがはイーストウッド。絶妙なニュアンスで演じるせいか、どこか愛嬌を感じさせるので憎めないのである。(笑)
そんな彼が隣人であるチャイニーズ系モウ族の少年タオとの交流の中で、閉ざされた胸の内を徐々に解きほぐしていくのだった。
今まで偏見の目にさらしていたモウ族の彼らが与えてくれる、これまでに感じたことの無い程のやさしさが、自らの過ちからくる罪悪感から解き放ってくれたのだった。偏狭に満ちた頑固な老人が時折見せる笑顔や優しさは、これ以上無い程に人間味が溢れていた。まるで白人至上主義として生きてきた老人のドキュメンタリーを見ている程に違和感無く入り込めていくので不思議である。

主人公のウォルト。この存在は我々の先入観上にある白人の姿と言える。
この映画を現代のものと捉えればウォルトは80近い。ベトナム戦争、公民権運動などの暗雲立ちこめたアメリカをも経験している。
戦争を経験し、現在のアメリカの基盤を作ったとも言える自動車産業の創世記を支えたこの世代。しかし彼らにとって国を守るという建前、多くのヒトを殺めることを余儀なくされた戦争は苦く暗い思い出しか生み出さず、家庭を守る為に必死に汗を流し、国家をも支えた自動車産業も後退したことでその存在価値を否定される結果となったのである。
まさにアメリカの成長がもたらした弊害の一つと言えよう。

衝撃の最後は、これまでの荒々しさが嘘かのような優しく寂しい最後。
優しさと寂しさ。一見相反する表現かもしれないが、観て頂ければこの表現に納得してくれるのではないだろうか。

今回のテーマも大枠では人種差別ととれるだろう。
人類が抱える難題のひとつ。
血に塗られた歴史はそう簡単に覆ることはない。
今日も至る所で、流れる必要の無い血が流れ、そんな血が新たな憎しみを生み、さらなる悲しみを生む。そんな負のスパイラルが途絶える日は無く、平行して人種間の争いも絶えることはないだろう。血は流れなくとも、見えない差別は我々の生活にも根付いており、無意識に誰かを傷つけている。
そんな現実を身を持って呈し、作品を通じて我々に突きつけてきたイーストウッド監督に敬意を表したい。

長々と書き綴りたくなる程、深いテーマで描かれていた本作。
出会えて良かったと思える久しぶりの名作である。
こりゃ来年からNEWSWEEKの珠玉の一本入り確実かな。

IMG_0037_convert_20090517232747.jpg

良すぎてプログラムも購入しちゃいました。
そりゃ買いますよね。




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2009年05月17日 | Comments(0) | Trackback(0) | 未分類
コメント

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